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クーラーの効いた薄暗い部屋。

チープな電子音のBGMと共に、モニターに表示されたバーが

0時の時報を合図にしてぐんぐんと満たされていった。

外に出るなんてナンセンスだ。

熱いしダルいし涼しい部屋にこもってポテチを片手にこんなだらしない体制で

ゲームでもしていた方がいい、この場にカメラがなくてよかった。

ものすごい体制で俺がコントローラーを連打しているところを見られなくて。

コントローラーを1秒間に30回連打しながら100%に到達するのを待つ、

イヤホンからはもう10年前のミリオンセラーになってしまった合成音声の歌声、

背後にそびえるディスプレイには自作の愛しいフィギュア達が共にゲームを見守ってくれている。

画面の向こう、さざ波のSEからはじまったまぬけなロゴについ笑みがこぼれて。

俺の暑くもない、汗をかくこともない、そんな夏が始まった。

 

陽は乳白色の強い光を撒き散らして溜め息の出るような眩しさを誇っている。

お陰様でどべどべの汗をかいているはずの一行だが、

クーラーが効いた涼しい快適な旅客機の中でそんなことはどうでもよかった。

らびぃ財閥の所有するプライベートビーチに、巨大自家用旅客機。

カランコロンと揺れる氷はトロピカルに飾られたグラスの中で踊っている。

事の始まりは夏休み前最後の登校日に起きていた。

💘「みんなでウチの持ってる別荘に来るのはどうかなって思ったの!」

HR後、メガホンをONにしてキンキン声の天使はそう叫んだ。

 

💘「高校生活の夏!めいっぱい遊びたいよねよね。ビーチめちゃ広でウケるし来ない?

決まりね!モンスター科ご一行ごあんなーい!

当日の朝になったら連絡飛ばすからそれまでに水着と荷造りヨロ♪」

それだけ伝えると、彼女は日時も言わずせいぜいUSBメモリか小指くらいしか入らなそうな

ピンクのバックを持ち出し瞬きの間に教室から飛び出して行った。随分瞬間風速の速いことである。

平気でそんなことを言えるあたりは良くも悪くも台風の目と言うべきだろうか?

そして来たる本日8/21の朝。

来たのは一斉メールと、その30分後に寮の前にどんと着陸したドデカ飛行機だった。

恐らく1番でかいサイズのものを想像していただければいい。

サイズ比較のスチルはなどは特に実装されていないので。

勿論抵抗した生徒も居たが、そこは持ち前のゴリ押しと学園長の一声がその場を制した。

👻「あの…ぅ、海とかビーチとか陽キャっぽいのはちょっと…

なんか塩水で浄化とかされそうですしおすし、知らんけど…」

🧬「残念ながら訓練だ。 ぱふぃ、あまりバカンスのように吹聴するなと言っただろう…

これは私、すなわち学園が主体で進めている訓練合宿、だという体なのだが。

いや…しっかりHR内にそう連絡しそびれた私が悪かったな…だからこそぱふぃに任せたのだが…」

搭乗口からばさばさと風を受け、モノクルが今にも飛ばされそうになりながら

今伝えられても困るだろう。 少なくとも所謂陰キャとして日常を過ごしているものには。

気持ちは非常にお察しするところだ。

👻「どっちにしろ行きたくね〜ですが…!?うぅ…

でも1人は1人で仲間はずれ感あるし行かないと単位落とされるとかあるんですか…?」

🧬「単位までは行かなくとも、訓練より重要な用事があるならばお聞かせ願いたいところだな」

💘「…?えビーチだよ?みんな大好きだし行きたいくない?泳げない系?

ぱふぃちゃん教えられるから行こーよ!ねー行こーよ行こーよ行こーよーーッ」

 

🍯「あaア アムちゃん!腹括って乗ろ…!多分あの2人了解しない限りぐいぐいくるだろーし…!!

い、陰めのもの同士乗り切ろー…よ…!」

強引な愛沢家✖️2を前に、ばつが悪そうに口を閉じたアム・エンヴィー。

片や白のフリルやギャザーがあしらわれた水着、

片やイエローをベースにした攻めたラインの水着が期待混じりにトランクから飛び出ていたが。

 

💘「さーワクワクで期待してて!絶対楽しい思い出の夏にできるよーに、

ぱふぃちゃんいろいろ準備したんだもん♪」

あれやこれやと連れられ現在にチャプターを戻すが、

煌びやかで快適にこしらえられた大きなラウンジで一行はくつろいでいた。

ピンクが基調で無いあたり愛沢・ぱふぃ・らびぃではなく学園長の趣味であるようだ。

 

🍗「まあ…!これならくつろげそう。そちらに盛り付けられてるお料理、

いただいても?お肉にフルーツ…上空でチョコレートフォンデュはいくらなんでも無謀なのでは…」

☎️「わーー!ソファーふかふか!みてみてっリンベルが半分くらい埋まっちゃうよー!

って、ほんとに沈んじゃう!きゃーー!!」

🍯「う、想像してたのとまた別やなあ…ビジネスクラスくらいかと思ってたら

普通にくつろぎ空間や…!まあ飛行機自体映画とかでしか見たことなかったけど」

埋もれていくRing-Bellを救い出しながら辟易する牛森海に、

なにやらドリンクの入ったグラスを竜宮城恋が差し出した。

 

🐉「うみー、そこにあったドリンクバー全部混ぜたら俺様好みじゃなかったからやるー。

なあこれあとどんくらい飛ぶんだよォ?着くまで俺様のこと楽しませてくれんだろーなァ」

 

🧬「15分ほどのフライトになる。短い方だろう?お利口に待て」

そう言うと操縦席への扉へ彼女は消えた。直々に操縦するんだろうか?

CAPC⚪️M製の飛行機じゃあなければいいが。

 

機体はゆっくりとスピードを上げ、敷地内の道路を滑走していく。

普段生徒達はバスでの移動で利用している道だが、

窓から伺える景色はだんだんと高度を上げ奥行きを持っていき…

すぐにコロニー全体が見渡せるほどになった。

☎️「すごいすごいのー!!ベル飛行機はじめてー!!

ねえねえ、ビタとかぱふぃはいっつもこう見えてるの?いいなーー!

わたしもお空飛べたらおもしろいのにー!」

🦇「流石にこの高さまではあんま来ないかなー?ベルちゃん抱えて飛べばやれそーかも。

やっぱご時世的に気軽な旅行とか飛行機なんて乗ることないもんな〜…

う、耳が!誰かお水くれーっ!」

 

ペールグリーンのツタがしゅるりとグラスを手元へ運ぶ。

ツタの持ち主は大きなため息を漏らした。

🫖「はぁ…モンスター科総出で出かけるなんて…

随分楽しくなりそうですわね。メイくんとだけならよかったのに。

せめてその他の者達は譲歩しても、あの虫だけ今から下ろすのはいかがですの?」

⛓️「呼んだかリリィ」

🐉「エ、いいな〜ソレ!やるか?なんか緊急の時使うハッチ?

ドアかなんかあるんだろ?やろ〜ぜやろ〜ぜ〜ッ俺様スカイダイビング興味あるしみたい〜!!」

💘「ちょ、ちょっとそんなことしたらあぶないじゃーん!

さっきママがお利口にしててって言ったばっかだよお!?」

🫖「へ?お、お待ちなさい!今開けたらわたくしや他の者も巻き込まれるでしょうが!」

周囲からここまで止められて、彼は不満そうにオリバーの足を貪り始めた。

もちろんオリバー本人はこれ以上ないほどまでに顔を顰め嫌悪感を示しているが、いつものことだ。

 

⛓️「…愛沢、先日お前は別荘への招待だと言ったが 訓練なら学校でも実施出来るはずだ。

リリィの水着姿が拝めることは大変非常に心より喜ばしいがほか有象無象の目と言う弊害もある…

わざわざ移動しなければならない程大掛かりな訓練ならばもう幾許か説明が欲しいのだが」

手で竜宮城を払いのけながら淡々と漢字ばかり連ねるオリバーの顔は真っ白で、

飛行機に酔ったのかと思えば常日頃そのような顔色だったことを思い出した。

彼に陽気なバカンスというものは少しばかり風合いが違うかもしれなかったためだ。

💘「? プライベートビーチだから有象無象なんていないよ?

詳しく…そうだね〜え…まあぱふぃちゃんはよく泳ぎに行くけど、

行けばわかるし楽しいと思うからナイショってことで!お口チャック!きゃは!」​

いたずらに天使は返すも、それは当然オリバーの望むところではない。

こちらもまた不服そうに口を噤ん…お口チャックした、の方がこの場合は正しい。

🍗「うーん。それでも少し急でしたから、次からはもう少し詳細など…

持ち物や日時のご連絡をお願いしたいところですの。

どの程度かわからなくて、スーツケースを大量に要してしまいましたし…」

BIGサイズな彼のスーツケースはそれに比例してしっかりBIGサイズだ。

某珈琲店に行ったらアレを通常サイズとして召し上がれるんだろうか。

 

🦇「まー、忘れ物あっても15分で戻って来れるんだろ?

コンビニ行くみたいなもんじゃん。合宿ってんなら泊まるんだろ?」

🌈「え!?何泊なのら!?じぇりぃあんまりたくさんはお洋服持ってきてないのら〜!

夏っぽいアクセサリーとかはいっぱい持ってきたからどれつけようかうきうきだったのらけど」

🧬『まもなく当機は着陸態勢に入る。ようこそ、2泊3日のIsland of insect netへ』

 

🌈「む!2泊だそ〜なのら!よかったのら、ならきっと足りると思うのら…心置きなくあそべちゃうのら🎵」

 

綺麗に返答を返す形になったアナウンス、そして地面へゆるやかに着地した衝撃。

搭乗口が開かれて、光が漏れ出す____

💘「と!う!ちゃ!く〜! アロハ〜ッ!ぴか高ご一行さま、うぇるかむとう〜まいあいらんど〜!」

常夏の楽園が広がっている。 浅瀬はエメラルドに輝き、

燦々と輝く白い砂浜には転々とパステルな貝殻が転がっているのが窺えた。

🍥「り…リゾートですー!きゃー!!

わたし水着中に着てきたんです。もう遊んできていいんですか?いいんですか!?

あっ…準備運動がまだです…飛行機の中でやればよかったかも」

🪞「わあ…きらきら…!貝殻たくさん拾うの。たのしみ。

お着替えしてこなきゃねえ。あつそうだからお水もちゃんと飲まなきゃダメだあ…

ぱふぃせんぱい、お連れいただきありがとおーです」

💘「いえいえーっ、楽しんでね♪あ!降りてーあっちにお泊まりするとこ!

こっちがぱふぃちゃん命名ちょーテンションあげあげビーチ!

お泊まりするところ、たくさん個室があるから好きに使ってお着替えしてきてね」

あっち、と言われて指さされた向こうには寮の数倍大きいホテルだかコテージだかが建っており、

少なくともどの部屋を選んでもオーシャンビューは確約されていそうだった。

フリーWi-Fiが飛んでいるなら尚嬉しい。

🧬「訓練については追って説明する。時間になれば通達するので各自好きに過ごすことだ。

部屋は…誰と利用しても構わないが23時には施錠する。以上解散」

🚬「…例えばリリィと同室で過ごしても問題無いってこと?

ふーん…来て良かったかも、ねえリリィ」

🫖「あらやだ。はしたないこと考えてみなさい、すぐにツタでペシ!ですのよ…

ねえ、この荷物持って下さるわよねメイくん」

☎️「わたし泳げるのかなー…?やったことないけどわくわくするー!

えへへっ水着もかわいいの持ってきたし、シセンひとりじめ?ってやつできるかもー!

うきわにぷかぷかしてーサングラスかけてーグラスを手でくるくるゆらすの!」

🍥「お荷物おいたら、すぐ遊びに行きますー!ふふ。単眼ねこにも海みせてあげるんです。

きっと初めてでしょうから。…キョンシーって日焼け=焦げ=火葬になったりしませんよね…どきどき…」

🐱「とわが焼肉になるのはちょっとこわいな…

大丈夫、ウチが日焼け止め塗ったげるからね。SPF300+とかの強いやつ。

ミディアムどころかレアにもさせないから安心して?あ!てかウチもはやく塗んなきゃ」

🍗「お水はイヤですが…せっかくお師匠さまがいろいろ用意してくれてるみたいですものね。

ビーチで遊びましょうか。俺もお着替えしてしてきます」

🌈「う〜…じぇりぃもお水はあんまし得意じゃないのら…

てぃてぃと一緒にビーチでお城つくるのら〜!てぃてぃも住めるくらいおっきいの〜!」

⛓️「無論同室でも良いのだが荷物でリリィの邪魔をしてはいけないな…隣の部屋を確保しなければ。

リリィ、どの部屋を使うか早くに決めてくれると助かるのだが…荷物を置いてすぐ監視体勢に入らなければ」

🐉「あのゴキの荷物、ぼーえんきょ?そうがんきょ?

どっちかわかんねーけど大量に入っててガチできもいぜ!ウエー!

陰気くさいしかき氷のシロップとかぶっかけといてやろうかな。

虫だし群がって喜ぶだろ。 てか海でけー!俺様よりでかいの気に食わねーな。

なんでもいーから早く俺様に夏させろー!」

🍯「陽キャばっかだ…やっぱあの水着、着るのやめとこうかな…?

うーっでも今日あれしか持って来れなかったし多分わりとみんなビーチ行く流れだよね…!

ぼっちは流石にちょっと嫌…!うう、万が一調子乗ってるって思われて

帰る時置いてかれたりしたらどうしよう…」

👻「や、アムもいるのでぼっちでは無い…はず…です…

やっぱホテル籠るのも陰キャ極めてますってかんじしちゃうし…

集合写真とか撮ったときに合成で付け足されそうだし…

はあ、仕方ないから水着でついてきます けどね! 仕方なく。仕方なくだし。ガチで。」

🦇「何して遊ぼ〜!モンスター能力フル活用ビーチバレーとかしたらめっちゃおもしろそ〜なんじゃない!?か!?あーツタとか腕いっぱいあるとか背でかいとかチートか〜…

…お腹空いてきたかも。夏っぽいなんか食べたいね」

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ぱちゃぱちゃ水辺で遊ぶ生徒、砂遊びする生徒、日陰で過ごす生徒、過ごし方は様々のビーチサイド。

 

💘「えへ〜…みんな楽しんでくれてる?っぽいから?も〜ちょっと遊んできちゃおっカナ…!?」

器用なクロールで沖へ泳いでいく愛沢の水飛沫を見送る、

浮き輪に揺られたサナナ・ネヲルとヴルコは、

ぱちゃぱちゃと水をほんの少し弄ぶ程度で済ませていた。

日焼け止めの効果で焼ける心配はなくとも熱が上着へこもっていたが

冷たい大きな水たまりなら掃いて捨てるほど溜まっているようだったから。

🐱「ん〜…あるてーど遊んだら日陰戻ってネコらしくお昼寝でもしてようかなあ。

ちょっとあづいし…かき氷にラムネとか冷たいのほしいな〜…」

 

 緩くなり始めたドリンク片手に、ずいぶん小さくなった氷を舌で転がして遊ぶ。

こくりと飲み込めばしゃらりと涼しげな音を立てて体の中枢に消えていった。

🪞「これ、うすーいピンクですてきかも。 いろんな色が入ってる、

虹みたいな貝殻があったらもっとすてきだとおもうけど…あるかなあ?

いっぱい探さなきゃ。…んむ?なにかしら」​

🌈「しめる?ど〜したのら?海のほうみて…

あ!てぃてぃもしめるも入れるくらいのお城だったらもっと楽しいのら!

とわりちゃん、じぇりぃはも〜っとお砂集めてくるのら!」

す、と沈香堂凍メルの指差した先。

そういえば先ほど泳いで行った愛沢が、ものすごいスピードでこちらへ泳いでくるのが伺える。

🌈「ぱ…ぱふぃがサメに襲われてるのら〜〜〜〜〜⁉️⁉️⁉️⁉️⁉️⁉️⁉️⁉️⁉️⁉️」

​​

🌈「エ!!どうするのら!??ぱふぃがんばるのらーー!!こっちまで泳ぎ切るのらーーー!!!!」

🍗「…? 翼で飛べばいいんじゃないかしら。サメは飛ばないですし」

 

否、サメはたまに飛ぶことがある。

B級映画の登場人物に転生した場合、又は水着のギャルは気をつけるといい。ライフハックだ。

🍯「も…しかして、あれが訓練?だったりしないよね?」

🐱「訓練にしちゃちょっと必死というか迫真だけど…

て、1ぴきとかじゃなくない…!?後ろにめっちゃ水飛沫たってる…!!!」

こちらも否。 確かに荒波の如く、そしてその波の中にちらほらと見える背鰭が天使を猛追している。

サメはギャルが主食だと近年の研究でもわかっている為1人呑気に沖へ出るとこのような目にあう。

特別な訓練を受けていないモンスター又は人間は真似をしないでいただけると助かったりなどした。

🐉「ふ〜〜ん?つまりフカヒレ食べ放題ビュッフェ付きの2泊3日だったワケだ!

ぜ〜んぶ俺様が食い散らかせばい〜んだろ?フカヒレってど〜調理すんだよ!誰か今すぐググれ」

⛓️「このままこちらへ来られて、万が一水飛沫でも掛かればどうする。

リリィは水が苦手だというのに…実害の出る前に処理する」

 

👻「えっえアッ!?戦うカンジ!?

って、ビーチにあるものポルターガイストしても弱そうなんですけど!詰んだ!!」

🍯「でもぱふぃちゃん助けた方が絶対良さそうだし…!

ぱふぃちゃんいなくなっちゃったら困るよ…!スライムくんたちおねがーい…!!」

🫖「ハア…優雅なバカンスにしては少しばかり雑音が多すぎますわね。

少しお掃除しなくっちゃ… そうよね、サナナ。頑張って」

🐱「ウチ!?リリちょっと待って、 あの距離はまだ流石にヴルコ届かないよ…!?」

🫖「ふふ。流石に 、 冗談よ」

🍗「どちらにせよ、長・中距離で攻撃できない生徒は下がってた方がいいんじゃないんでしょうか。

危ないですからメイちゃんは下がっててくださいな、」

🚬「え〜、でも確かにサメに食われて死ぬのを最高とは言えないかも。アハハ…タバコでも吸ってるよ」

🍥「ふむ…お城が崩されない様に霧吹きだけしてちょびっと退避しますか。しゅしゅっとなー」

☎️「サメってこわい…?ぐっろきーずみたいなカンジ?おでんわ今持ってないや…」

🪞「近くに来てくれないとごんってできないよう…視るにしてもせんぱいがいるからなあ」

🦇「ねえ!なに!?砂の中だからなにがどうなってるかわかんないんだけどー!!

サメが来たの!?どんくらい!?見に行きたいー!ねえー!!!」​

…そこからは、襲いかかるサメと生徒達の乱闘だった。

ある者はかじりついたり3Dモデルがバグった様に地形と交換させていたり

包丁で滅多刺しになったり殴られていたり…勿論全て被害を被ったのはサメ側であったが。

ちなみに愛沢は途中で翼を思い出してヤシの木に避難していた。

そうしてビーチに平和がおとずr

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▷???

そんな未来も過去もなかったんだよ。

ビーチに平和なんて訪れなかったし、

愛沢・ぱふぃ・らびぃはあの日死んだし、

きっとこれからも生徒が死ぬ。

ああ、セーブを失念していた。だからもうこのゲームでは遊べない。

夏は戻らないし潰れた膿は捨てられて花は黒く枯れて生物は腐って虫が群がって

あの日無くしたカセットは中古屋で叩き売りされて牛乳をこぼしてた。自動セーブのゲームならよかった。

ブルースクリーンの :( でさえも俺を馬鹿にしている。夏はキモい。夏は流行らない。夏をハブりたい。夏は調子乗ってる。夏が嫌いだ。ぶつりと切れた黒いモニターに自分の間抜けづらが写っていてまた新しいニキビができていることに気が付く。机の上のモンエナとカップ麺がやれやれと肩をすくめた。夏は思い出す。夏は死の季節だ。死は夏の季語だ。あの日も暑かったがあれは本当は冬で、ただパソコンの廃棄熱が疑似的夏空間を演出していただけだった。夏はプロデューサーなのかもしれない。だってアイドルが出す夏に似合う爽やかな歌は全部嘘だったけど全部綺麗だった。もうどれだけ洗っていないかわからない抱き枕に飛び込んだ、多分最後は去年の冬だった、今は夏だ、パソコンに扇風機をくくりつけても綿菓子はできなかったし冷蔵庫で作った氷をキーボードにまいておいた。きっと明日には虹が生えていると思う。これらのポエムに意味はあったりなかったりする。カスみたいな鼻血の詰め物みたいな気持ち悪いツイートをまだ見ているならインターネットをやめて風呂に入って寝たほうがいいのは自分だ。最初から全部独り言だ。新しいカセットを買いに行こう。綿棒でサイダーをこすりつけよう。

これで夏はぜんぶおしまいだ。

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