

Pity kitty high school
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▷File4.
▷Andromeda TiTi
無惨な姿になったアムちゃんと、一緒に派遣されたみんなが帰ってきてきてから5日。
やるせない気持ちを抱きながらも、どう足掻いても覆すことのできない
死という事象・事実だけが、教室のど真ん中で無情に佇んでいました。
ゴーストを弔うなんてなんだか不思議な説明になってしまいますが、
冷たい墓石は体温のない彼女にどこか似ている気がしたのです。
🧬「では、本日のHRを始める。
…新たに派遣要請が届いた。要請が届くということは軍がなんとか戦線を押し上げている証拠だが…
今回は竜宮城恋、牛森海、星砕とわり、アンドロメダ・ティティ。
以上四名に召集がかかった。本日の昼休み後昇降口前に集合すること」
…ついに俺にもお声がかかったのですね。
静かに震える海ちゃんにあくびでお返事をする恋クン。
とわりちゃんは、ワクワクしながらもどこか不安げな様子です。
安心させようと微笑みかけるも、ぎこちなく曲がった表情筋を見てこてりと首を傾げられ、
微笑み返されました。んん…これは成功?なのでしょうか。
きんこんかんこん。
しっかり真面目に授業を受けまして、お昼休みが始まります。
出発前にしっかりお昼ご飯を食べて準備しておかなければなりませんね。
そういえば、ここPity kitty high schoolのお昼ご飯はお弁当か学食かを自分で選べるのです。
モンスター科は学食も無料で提供していただいておりますので
元来お弁当を持ってくる必要はないのですが、
自分でかわいいご飯を用意するのはとても楽しいのですよ。
勿論制服を汚さないよう、ふわりとお上品にハンカチを膝へ敷きます。
しっかり英気を養わねば…と思いましたが、ちらりと視界の隅に映った2人。
…ううん、俺ってばいつも少しお節介なのかもしれないですが、気になるものは気になるのです。
🍗「とわりちゃん、べるちゃん。
よければお昼 ご一緒しませんか?
出発までお喋りしましょ」
…後ろにいるテレフォンガールは、
あの日帰ってきてからたまに元気がないように見受けられます。
🍥「ティティ先輩!わたしは是非…」
☎️「それじゃあ、ベルもお邪魔しまあす…。えへへ、お誕生日席にすわっちゃおっと!」

「「「いただきます!」」」
声を合わせてそう言ってから、ゆっくり蓋を開く。
かわいらしくボリュームも兼ね備えた、俺の素敵なお弁当と朝ぶりのご対面です。
とわりちゃんはカニさんの形をした菓子パンと牛乳パックを、
べるちゃんは学食のハンバーガーセットのトレー おもちゃ付き にいただきますをしました。
☎️「…ねえ、とわりとティティもバスでどこか行くんだよね?
わたしのときは映画館にいったんだけど…えっと、大変なことになっちゃったみたいで」
ポテトをもすもすと咀嚼しながらベルちゃんが話し始める。
☎️「あのね…ちょっとだけお話し、聞いてくれるかな。
わたし、ぐろっきーずとはお友達になれないかなーって思ってたんだ。
でもぱふぃもアムも…ぐろっきーずにやられちゃったんだよね、?
ベルはみんなと一緒にたのしくしたいの!
ぱふぃともアムともぐろっきーずとも、でもね、いまは…
あそぼ!とか、ぐろっきーずにキョーミがあるなあとか、
元気に言い出せるふんいきじゃないから…どしたらいいかなって思ったんだ。
…はけんでおでかけしちゃうまえにお話ししておきたいなって思って」
ずずず、とオレンジジュースを飲み込み がじがじとプラスチックのストローを齧る
彼女の背中は、自信なさげに丸まっていく。
🍥「んと…すこし、わかる気がします。
みなさん悲しんでいたりショックを受けていたりするので…
そんな中でぐろちゃんたちに興味津々だと、ちょっと…フキンシンなのかな?
って、思っちゃう時が最近はあるんですよね。
結局ぐろちゃんたちがかわいくてテンション上がっちゃうんですけど」
☎️「フキ?
うんと、えっと…、うん。たぶんそんなかんじだとおもう!
ぐろっきーずにふたりはやられちゃったし…悲しいなって気持ちもあるんだけど、
いろんなのがベルのなかでぐるぐるしてるかんじして すっごいむずかしいんだ〜…。」
カニさんのおめめを食みながら、
そして小さいお口でチーズハンバーガーをもすもすと食べながら、
むーん…とふたりは顔を見合わせる。
お弁当の真ん中に飾られたハートを模したピック
(注1:この場合ハートとは心臓のことを指しています。)
には大きなお肉のお団子が5つも刺さっていて、
ひとくちひとくち咀嚼するのと一緒に2人の言葉や気持ちも想像して、咀嚼する。
ふむふむ、それで悩まれていたというわけなんですね。
🍗「まず…べるちゃんがみんなのことをそうやって気遣えるのはとっても素敵なことだと思うのです。
しっかり周りのことを見ているから、みんなの真似がお上手なのかしら。」
彼女はえへへ、と素敵に微笑んで いつでもだれでもまねっこできるよ!
と頭の受話器を口元へあててみせる、
そのすぐそばのほっぺにはピクルスのかけらがくっついていて、そっと拭ってあげる。
🍗「そうやって元気に笑えるべるちゃんやとわりちゃんのことを、
俺はすごいなあ素敵だなあと思いますから、誰かのことを思う気持ちは忘れないまま
いつも通りに 好きに気ままにぐろっきーずと仲良くできる道も
探しちゃえばいいんじゃないでしょうか」
お友達が減っていくのは本当に悲しくて、
俺はやっぱり見知らぬぐろっきーずよりお友達のほうが優先順位は上なので、
お友達が危険な目にさらされていれば無論ぐろっきーずのほうを食い殺しますが…。
でもこの2人は2人で、気持ちに自由に過ごしていたらいいなと思うのです。
🍗「気分が落ち込んでいて暗い時こそ、
明るい子に元気付けられることもありますよ」
指先でくいっと自らの口角を押し上げる。
今度はうまく笑えていたかしら。
▷竜宮城恋
クソだり〜長い道のりでバターになるほど揺らされて到着したのは、ボロっちい水族館だった。
前回派遣に行った奴らから見せてもらった(※注2)資料よりか、
破損具合で言えばだが ましな具合な場所だ。
注釈2:見せてもらう前に奪った。
🐉「水族館だァ〜??俺様たち今からスシ食いに行くってか?
ぎゃはは!学園長サマは太っ腹じゃんなァ〜〜!ラッキー♪」
だむだむとシッポが床の上をはねる。
まーボロっちくても海鮮丼食い放題なんてサイコ〜だろ🎵
🍗「水族館…!!いいですね、
こういうところあまり行ったことががなかったから割と楽しみです…!」
🍯「た、確かに水族館は陽キャの遊び場…?かもしれないけど、
今はぐろっきーずがいるんだよ…!……な、なんて…わざわざ言わなくても
みんな分かってるよねごめんなさい……」
触覚をぴこぴこ動かして珍しくごきげんそ〜なてぃてぃに、
いつも通り陰気くさくきょろきょろとあたりを警戒するうみ。
🍥「海先輩の言う通りです!今日は魚を見にきたんじゃなくて、
ぐろちゃんたちに会いに来たんですよ!張り切っていかないと!」
それに、やたらテンションと手振り身振りのでかいとわり。
じたばた動かしてそのたび揺れる袖が、いつぞやのじぇりぃに似ている気がする。ちょ〜っとウケる。
どこか吹っ切れたような、てか何も気にしなくなったようなテンションだ。
気にしなさすぎてさっきから袖がぽむぽむ俺様にぶつかってんだワ!!
そんなキョンシーにはデコピンをしてやる。
俺様のようにご機嫌でも冷静沈着にいればいいものを。
🐉「はァ〜??しらね〜ようるせ〜なデカい声だすなや、
そんなん秒でノシて残り時間で寿司三昧すりゃいいだろ。
第一海はこの最強恋様が居んのに何ビクビクしてんだよ」
うみの肩に手を回しくつろぐ。超絶BIG俺様の前にはちょうどいい腕置きだった。
🍯「だ、だって…状況が状況だから素直に楽しめないっていうか……
確かに恋くんは凄く強いし、キラキラしてる1軍だけど…って、
え"っ、あっ……!?ち、近い!恋くんちょっと距離が近いと思う…っ!!!」
真っ黒い肌がほんのり赤みを帯びて
茹でダコみたいになったうみは急いでてぃてぃの後ろに隠れてしまった。
🍗「ゎゎ……海ちゃん大丈夫ですか、??
恋クンも女性へのボディータッチは控えてあげて下さい……
微笑ましいから別にいいんですけどね。ヒ、ヒヒ"…」
俺様が腕置きにしてやってんのに、逃げるうみもそれを庇うてぃてぃもわかんねー。
光栄に思えよ、第一とわりだとちっさすぎるし
てぃてぃだとでかさがそこまで違わねーもんだから、置くとこ全然無えんだもん。
🐉「は?お前も触ってんじゃん。俺様に指図するとか何様だよ、食い潰すぞ。
…お前も何?文句あんなら俺様の顔見て話せよ、なァ。」
🍯「んむっ!?ご、ごめ…っ人と目も合わせられないミジンコ陰キャでごめんなさい…!!
れ、恋くん……もしかして怒ってる…?」

🐉「…はァ、クソつまんねェ〜。俺様帰りてェんだけど。
…怒ってねェわ。腹減ってんだよバァカ。」
🍥「んぐぐ…おでこがいたた…
虫のいどころわるめなのでしょうか?さっきまでルンルンだったのに。
さーほらほら早く行きましょ!早く済ませてぐろちゃんとこ行きましょ!」
🍗「ってそうでしたよね、恋クン、海ちゃんごめんなさいね,
普段からおれたちこうだから感覚がバグっちゃったみたいです、
ハハ………俺ってば時々こういうことあるから…気をつけないとね。」
はっきり言ってさっきのはウソだ。
ゴキゲンの俺様をイラつかせた罪はバカクソ重くあるべきだ。
でもこれは空腹に対するイラつきで、だから特別イラついてなんかいなくて、
このボロっちい水族館がよく見たら気に食わないくすみブルーで塗られているのが全部悪かった。
横にあほうんちきしょきしょゴキブリ虫がいたらサンドバックに食いちぎっていたが、
アレと一緒に行動するのは普通にイヤなので
俺様がムカついた時だけデリバリーされてこいよ気が利かねえなあ。
仕方ねえ、とっとと魚とぐろっきーずを食い散らかしてとっとと帰る。
それが一番だろ、俺様は賢いので”解って”んだよナ。
濁ってきしょいガラスの扉を蹴飛ばして一番乗りした。
大きく水族館のロゴが飾られているロビーはから先は薄暗く、
カウンターにはマップの冊子が大量に置いてあった。
この世のものはだいたい全部俺様のものなので、一冊奪ってとわりに投げる。
うまく受け取ったキョンシーは暗い中しかめ面でそれを解読しようと睨みつけ、
前も見ずにとことこ着いてきた。
手に持つその表紙には「むしちゃわんるんるん水族館」と書いてある。
カウンター前に設置された噴水には
イルカ、ジンベエザメ、ペンギンなどが精巧に彫刻されデザインされている。
ちょろちょろと弱い水流でそれぞれの口や目から水が流れ落ちているのは
壊れているのか元々なのか。
かちり。
どこかからそんな音が聞こえて一瞬身構えれば、
水流が増し生き物たちのまわりを踊るように水が舞い始めた。
どうやら時報代わりに水が吹き出すようで、弧を描くように橋をかけたり、
ささやかにライトアップされたり…
そんなことを繰り返して数分すれば、噴水はまた沈黙した。
🍗「あら、素敵ですね。」
🍯「わ、わ……!?す、すご…
こういうの、デートしてる時とかに見れたらきっとすごく幸せなんだろうなぁ…。
うちとは全くの無縁だけど……」
🐉「何ブツブツ言って、って何だこれ。
偽モン魚じゃんかよ!オイ、食えねェぞ、ソレ。」
なにやらうっとりしているうみ。さっきから本当にわかんねー、
水やら食えない石の魚だけ見てなんになんだよ?
それなら俺様の顔面のがよっぽどキレーだろ。暗くて見えてねえのか?
🐉「オ!水槽あんじゃんか!寿司寿司ス〜シ」
🍯「た、確かに偽物だけど、でもきれいだし…。
え、あ、水槽の魚も食べちゃだめだよ恋くん…!?」
🐉「ア〜?ダメとか知らね〜よ。んなの全部恋様が決める事なんだわ!
フフン♩俺様海鮮大好物なんだよな〜♩ぎゃはは!」
視界の隅にエメラルドグリーンの光がちらりと見えて、ずんずんと突き進む。
カウンターの裏下へ下がる階段があり、
吹き抜けのような空間前には巨大な水槽が堂々と鎮座していた。
群れを成す小魚や群雄割拠するサメに色鮮やかでカラフルなサンゴなど
間違いなく目玉のひとつであろうそれが分厚いガラスの向こうに広がっている、
俺様の今日の晩飯共だ。
上からはきらきらと淡い光が差し込んでいて、
どこからか水中のごぽりごぽりという泡の音まで聞こえてくるため、
海の中をそっくり持ってきたような水槽にタイやヒラメの舞い踊るなんとやら、
夢見心地に演出された水槽の真ん中にはトンネルが作られている。
入ってみれば360°海に囲まれた大パノラマ水槽として楽しめるようだ。
🐉「うお!デケ〜!超デケ〜!まァ俺様ほどじゃねェけど。俺様の方がかっこよくて偉いし。
おい!これどーやってあっちいけばいーんだよ!水槽割るか?濡れんのはだり〜なあ…。」
🍯「ひぇ……どうしよう、このままだとここに居る魚が皆お寿司になっちゃいそう…
今のところは大丈夫そうだけど…本当にこんなところにぐろっきーずがいるのかな?
ちょっとあっちの方も見てみようよ」
暖かい海に生息するカラフルな魚たちのカラフルな住処が広がった大型水槽には、
ジンベエザメが悠々自適に海を飛び、
青や紫に赤などたくさんの色達がひれをドレスのようにたなびかせている。
水とこちらを隔てるガラスの近くには恐る恐る顔を出したカクレクマノミと目が合ったり、
いつの間にかBGMは泡の音からご機嫌な南国のマリンバに変わっていた。
🍗「……こういうの家族とか友達で行った事がないから本当、新鮮ですね。
俺は向こうへ行くから,何かあったら教えてくださいね。では。」
🍥「あ!待ってください!冷たい海の水槽…ってことは、
オリバー先輩みたいな魚いますかね?
なんでしたっけ…大王…クソ虫…?私もそっち見に行きます!」
🐉「フンフフン♩やべ〜うまそ〜!!俺様カニとか好きなんだけど、ないワケ?
ったく、許せねェ〜。館長は俺様を不快にさせた罪で死刑×5億兆回けって〜だワ。
ここもうイイわ、俺様もそっち行こ〜♫」
横に伸びた通路は他のエリアより薄暗く肌寒い。
少し重苦しい雰囲気の水槽群には深海魚など一風変わった生き物たちが収められていたようだ。
説明書きには奇妙な進化を遂げた彼らのことが事細やかに記されていた。
が、不思議なことにどれも水槽は空だった。
🐉「ア〜?んでカラッポなんだよカニどこだよ。俺様にビビって逃げたんか?雑魚乙〜
こんだからお前らは一方的に見世物にされて管理されて生きるか
食われるしか選択肢が無いクソ弱者なんだよクソ魚がよォ〜。」
🍯「ひい…カニって深海でも生きれるんだっけ……。
…あれ、本当だ。ここのエリアだけ何もいない…?
魚が水槽からそう簡単に逃げ出せるとは思わないけどなぁ…、
……………。…えっと、まさか……おばけとか…いや、そんなわけないよね…?」
怯えて俺様の後ろに隠れるうみを笑ってやろうと振り向いて、…
振り向いて、うみの肩に乗った手に気がつく。
🐉「なーてぃてぃだからさっき言ったろーが触んなって…」
ちがう。てぃてぃじゃない。あいつはさっき俺より先に進んでった、
とわりの手はもっと丸くて小さい。
瞬間鼻を刺すような悪臭が届いて、その腐り落ちた眼球と目が合った。
🍯「ワ”ァっ”……!?イヤ、来ないで!!」
反射で手が伸びて、敵の頭を握り潰す。
うみがどるるんとスライムを生み出して、
首なしを分解しやがったものだから残りの部位は食べられそうになかった。
掌にへばりついた血やら肉やらを舐めとる、
ぐるりと俺様たちを囲んだぐろっきーずを鼻で笑った。
🍥「ぐ、ぐろちゃんたちがこんなに…!?囲まれちゃいましたね…
どこから出てきたんですか!斧!斧…!!ごめんねぐろちゃんたちー!」
🍗「海ちゃん恋くん、ご無事ですか?!
数は…無数にいますね。俺から離れないでくださいよ」
俺様とは段違いに腐り果てた底辺ルックスのわりに、
ぐろっきーずの肉はジビエとローストビーフの中間くらい
臭みが癖になる程度のうめ〜〜肉だった。
ふうん。じゃあ今日の飯は肉寿司と海鮮丼な、全員ぶち殺してやるから覚悟しとけや。 ^-^ v
俺様とてぃてぃがひとりひとり潰してこねてミンチを量産していく中、
とわりはちっせえのを生かしてかちょこまか動き回った挙句
なにやらぐろっきーずに向かって大声で話しかけている。
🍥「こんにちははじめましてぐろちゃん!わたしは星砕とわりです!
戦う気のないのんびり屋さんなぐろちゃんはいませんか、いたらわたしに教えてくださいね!」
なにやらそれぞれに挨拶して回っているらしい。
足を斧でずたずたにしてから話しかけてるみてーだけど…
それでも動くやつは動いて、どうにかとわりの足に噛みつこうともがいている。
🍗「とわりちゃん、素敵ですけど気をつけて…!!
足だけじゃなくしっかり行動不能にさせてからやってみてくださいな!!?」
🍥「授業では、確かぐろっきーずの知能は魚レベルって…
そのくらいならだいじょーぶなはずです。 囮にもなりますし!
今はみんなお話しできなくても、
しっかりご飯とおトイレを覚えたらいつか一緒に暮らしていけるかも…ですし」
ハンバーグおかわりをキメながらも、
無限に湧き出てくるぐろっきーずたちはなかなかウザったく足止めされている。
弱いのほど群れるってヤツなんだよな〜、ダサすぎる全員しんでほしー!
最高孤高俺様にひれ伏せ!
🍯「も〜…!!ヒトのかたちしたぐろっきーずってレアなんじゃないの…!?
なんでこんなに、もうっ!!邪魔だよっ…」
足止めの成果だろーか、とわりのぎゃあ!って悲鳴が聞こえる。
数でごり押しされ捌ききれなかった雑魚が、とわりの斧を取り上げていたからだ。
てぃてぃもうみももっと戦えよ俺様充分食い殺してんだから!
🍥「返してくださいーー!!
モンスターとして戦う頼みの綱の相棒なんですよ、コラーーっ!」
雑魚は斧を取りあげればそれを垂直に振り下ろし、
手を伸ばし暴れるとわりの腕をぼとりと切り落とした。

🍥「びっくりした…そんなことしたらダメですよ!私だったからいいものを、」
🍯🍗「「とわりちゃん!!」」
案外冷静なとわりに焦って2人も駆け寄る、
オイ集まったらぐろっきーずも集中するだろーがバカ!バカ!バカの大賞!
🍗「っ…一度引きましょう、海ちゃんはとわりちゃんをお連れしてくださいな!」
てぃてぃが床に落ちた腕を急いで拾い上げハンカチに包んで抱えた、
ハァ?俺様まだ戦えますけど!!全然元気でピンピンだから全員ぶちのめせますけど!!
てぃてぃに腕を引かれ仕方なく俺様も着いていってやり
水族館のバックヤードらしき狭い部屋に立てこもる。
ガンガン扉の向こうがうるせーもんだから腹いせに蹴飛ばすと、少し静かになった。
🍯「と、とわりちゃん大丈夫…?いたくない?血とかでてるけど…
ううん大丈夫じゃ無いよねわかりきってること聞いてごめんね、
うまくカバーできなくてごめんねうちがクソザコなばっかりに…」
🍥「だいじょーぶですよ、わたし痛覚ないですしそもそもキョンシーですから。
でもびっくりさせちゃいましたね」
腕くらいでやたら大焦りして大変なんだなコイツ…と慈悲深いこと思ってやっていれば、てぃてぃも随分顔もちが暗い。 あーそっかコイツら目の前でぱふぃが死んだの見てんだっけ?だからってあのまま俺様が全員薙ぎ倒してれば終わったのに。大変なんだナ!
🍥「腕バラバラになっても私はなんとかなるとは言え、
ちょっと軽率だったかもですね。すみません…オタクの部分が黙っていられなくて…
みなさんには目立ったお怪我なさそうで良かったですけど。
…今度はちゃんと作戦、たてないとですね」
うーんと俺様除いた全員が首をひねる、そんなもん俺様が正面突破でよォ、
と口を挟もうとしたところ
🍗「数分ならあの通り凌げても、結局は消耗戦になりますものね。
殲滅が任務ですし…一網打尽に出来るような作戦を思いつけばいいのですけど」
だそうだ。いや俺様は勝つけどな。
でもぐろっきーず共を食べて消化して力にしたところで普通に雑魚だしなー、
てかまだ腹半分なんだよなって思い出してうみのスライムに手を伸ばす。
ちょうどいい甘さが便利なんだよな〜♪ってちぎるけど、
ん?そういえばさっきよりでけェ気がする。部屋狭えのにスライムの分際で俺様を超そうってのか??
🍯「ぅ… え?な、なにこれ、」
うみからスライムっつーか溶解液っつーかが、
普段戦闘訓練授業で見る倍以上が急激に分泌されている。そんなにはいらねーよ気使いすぎだろ、
🍯「やだ、なになになに?止まってよ…ごめんみんな、やばっ逃げて…!!」
▷牛森海
急激に体が熱くなっていく。酸っぱい味が広がって、ああそんな姿見せたく無いやって
反射でうずくまるも口からお昼ご飯が逆流する。脱水症状のひとつだ。
手袋にはスライムとお弁当と鼻血が混ざってへばりついていて、あつい、頭がいたい、どうして急に?
とわりちゃんがお怪我してびっくりしたから汗とかはちょっと出てたけど、
何も一緒にスライムくんまで出る必要ないじゃんどうしたの、なんでなの?止まらないよ…!!
🍗「海ちゃん…!!大丈夫ですか、俺たちはまずいいから落ち着いてください…!!」
心配して駆け寄って来れるてぃてぃくん。
ごめんね、てぃてぃくんも恋くんもとわりちゃんも今はうちのこと見ないで。
部屋がスライムくんで満たされてく、
うちに多少耐性があるといってもみんなの肌は溶かしていくはずだ、
…、そうだ、こんなにスライムくんが出てるならさ、……
🍯「…きゅ、急にごめんみんな… なんかぼう 暴走モードっぽい、
けど… うちこれ ぐろっきーずにぶつけてみる…… どう かな」
吐瀉物をスライムくんで丸め込んで、
どうにか心配させないように鼻血を手袋で拭う。
手袋が黒っぽくて良かった、赤が目立たない。
🐉「ハァ〜…?? 意味わかんねー、てか今日ずっとうみのことわかんねえ!
ゲボ吐いてんなら足手纏いじゃねえか俺様の後ろで休んでりゃいーだろ!」
🍗「恋くん、そんな言い方… でもそうですよ、どう見ても異常事態です。
どうにかバスまで辿り着いて学園長に調べてもらうべきですよ、」
🍥「わ、私たちへの影響を考えてるなら…
スライムくんでお怪我しないように私がお二人を抱っこして、
迎撃しながらバスを目指すとか…!!
…抱っこは無理があってもバスを目指しながら離脱するのが得策だと思います、
そんな捨て身特攻みたいなのする必要はないはずです!!」
ガン、ガンと扉がやかましく返事をする。
でもさっきまでの素手で叩いているような音じゃなくって、
明らかに鋭いもので破ろうとしている音だ。
次第にうっすら扉には穴が開通していって、とわりちゃんの持っていた斧の鋒が伺えた。
🍯「っ…もうあっちも限界、だね…… 他に作戦ないなら、
うち やってみる 怖いけど バスに向かって …」
ものすごい破裂音を立てて扉が突破される。
すっかり重くなったスライムくんをぐんって突き動かして、
傾れ込むぐろっきーずを波でさらうみたいに吹き飛ばす。
びきって骨が痛む感じがしたけど、
すぐに次の軍勢が流れ込んでくるからどうにか凌がなきゃ。
正直めちゃくちゃ気分は悪いけど、 ちょっとタンマ!が効きそうじゃないし。
🍯「はやく!!エンドランスの方む”かって…!!」
苦肉の策ってゆーか、すっごい納得してない顔でてぃてぃくんが2人を引っ張っていく。
うちだって死ぬのは怖いよ、でもさ…
🍯「あ”ぁ”っ……!!!」
ぶわ!って質量でぐろっきーずを何度はねのけても、
倒れたぐろっきーずを踏み台にしてまた新しいぐろっきーずが迫ってくる。
あちこち齧られて、その傷がまたスライムくんに溶かされものすごい痛みに変わる。
🐉「んぐ、クソ邪魔だクソバカボケ道開けろとっとと帰らせろ
俺様とうみ通んだろ目え見えてねえのかバーーーーカ!!!!!!!」
前からもぐろっきーずが行手を阻んで恋くんが応戦していくけど、
間に合わない。次第にあちこち齧られていく、さっきより敵の物量が増してるみたい。
🍥「あ…!! あぶないです、崩れてく!」
ふっって目の前が真っ暗になる、ううん体調はめちゃくちゃ悪いけど、
これは力尽きてるんじゃなくって天井が崩落して暗くなったってわかってるの、
体の悲鳴も無視して後ろに迫るぐろっきーずを最大出力で押し戻す。
🍯「もう…!!!痛いってば、バカァ!!!!」
もう指先の感覚なんてない、
ほんとに痛いもう頭がぐるぐるするし震えてないのに全部が体に響いてるよ。
どうしてこんなことになっちゃったのかな、
それに、 …それにさっきの最大出力でわかった。
もう新しく分泌ができない。
残ったぐろっきーずどうやっつけよう、先に行った3人は無事かな、
うち今更勝って合流なんてできるかな、もっとおっきくて強いスライムくんを作れれば
目の前の敵みんなやっつけられるかな。
痛みばっかりを伝達する脳裏をどうにか掻き分けて眼前のいっぱい、いっぱいのぐろっきーず、
ふと目の前の水槽に目が止まる。
…もっとおっきいスライム、つくれるじゃん、!
今日出したスライムくんたちを総動員させて巨大水槽にむかう、
入り口から見えた水槽だけれどこっちはその奥側で、
向こう側になんとかあっちの敵をやっつけた3人が見えた。よかった、大丈夫そうだ。
それじゃあ、あとはうちがこっちをやっつけちゃうだけだね。
せめて全部片付けるから。 そのあとで合流できる元気があるといいけど…
スライムくんを使ってまずは小さい水槽を割っていく、
操れば面白いくらいあっけなく割れていった。
深海魚さんにげだしててよかったなあ、スライムくんは水を吸ってますます質量を増している。
大きいスライムくんがどんどん敵を溶かしていった。
もううちの背なんかとっくのとうに越している、
ごぽりと空気がスライムくんの中に溶けて、溶かして溶けて。
喉からも悲鳴をあげたかったところだけど、もうどうせ誰にも聞こえなかった。
死がどんなものかって想像して、目の前で死んでいってしまったいちごみるく色の天使を思い出す。
彼女は一瞬だっただろうから、こんなに苦しくなかったらいいな。
もし天国にいったら会えるのかな?ぱふぃちゃんやアムちゃんに。
あるのかなそんなところ。お友達とはおんなじところに行けるといいなあ。
ふと向こうの恋くんと目があって、痺れた手がなんとなく伸びる。
そんな顔してるの初めてみたな、そんな顔しないでほしい。
だってウチなんかが役に立てるんだよ。
でもいさっき最後に言えたのは行って!
ってことくらいで全然お話しできなかったの恥ずかしいなあ、
うちもぴか高に帰りたい。帰らなきゃ。
こんな怖いところからつれていってほしい、ほんとは…
気持ちが伝わっていたらいい。そうだといいな。わかってほしいな。
悲しんでくれるかな。悲しんで欲しいけど悲しんでて欲しくないなあ。
恋くんのことだからウチのことなんて眼中に無いかな。
じゅわり、皮膚も肉も剥がれ蜂蜜に溶けていく。
そっと目を閉じた。痛くて痛くて仕方ない、涙が出る、涙が出るなあ…。

彼の思い出す牛森海がちょっとだけかわいく映ってたらいいなあって、
そう思っちゃう気持ちの名前はまだふんわりさせたままなんだ。
だってきっと伝えられないから。
▷キャラクタロストの為、プレイヤーを変更します。
▷星砕とわり
海先輩が、かくんと意識を手放しいっぱいの血を
スライムくんに混ぜながら次第に溶けていく。
強そうでかっこいい先輩のそんな姿をみてはいけない気がしてつい目を逸らすけど、
ティティ先輩と恋先輩は違った。
🐉「むかつく。むかつく、むかつくむかつくむかつく!!!!!!
俺様が目の前で全員ぶっ飛ばしてたらぜってーあんなんさせなかった!!!
俺様の方が強いし!!!それに…それに、うみが 死んだら……
むかつくからムカつく!!!!」
🍗「俺がもっと、敵を倒せてたら…?
…もうこんな思いイヤだったのに、不甲斐ないこと露ばっかりで、
ごめんなさい海ちゃん。ごめんなさい……!!」
でもティティ先輩は最善を考えてすぐ動いてくれたし、
恋先輩は充分すぎるくらい暴れて戦っていました。
私がちょっとはっちゃけたあたりから雲行きが怪しくなって、
おかしいことも起きて…どう声をかけるか考えあぐねていたら、
ぴしぴしと不穏な音が水槽から確かに聞こえてきました。
スライムくんが一番大きい水槽の水も取り込んで、
分厚いガラスさえ…このままではきっと割れて
ぜーんぶを溶かすスライムくんが溢れ出してしまいます!
🍥「っ、ごめんなさい海先輩、お二人とも…!!
行きましょう、きっとここも危ないです!」
ぐいーーっと袖を引っ張って、外のバスへ目をむける。
ピンク色のバスまで辿り着いて学園長に先輩がやっつけてくれましたって
報告に行かなくちゃ、じゃないとなんのために!
ティティ先輩がなんとも言えない悲しそうな表情のまま、
癇癪を起こしてしまった恋先輩を一緒に連れていってくれてバスに乗り込む。
せめて、せめて彼女を連れ帰らせてあげれれば良かったのに、
全部溶けて消えていってしまった。
🧬『…学校へ到着した後でいい。 何があったか、しっかり報告してくれ。
こちらでもぐろっきーずの反応消滅が確認された、ご苦労だった』
モニター越しに学園長がそう言って迎えてくれて、バスは動き出す。
海先輩をのこしたまんま。
🍗「…、もしかして………」

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